私は今、みなさまへの感謝・喜び・感動で胸がいっぱいです。本当にありがとうございました。そして、私の国のイラクの友人達への支援を決意していただいたことに感謝をいたします。
二年間に亘り、大使としての私に対し、イラクに対して多大なる支援を与えて下さっております森議長をはじめとするリーダーシップのもとに、支援活動という道を歩んできております。
昨日今日の二日間、私は、九州を鉄道を利用して回ったわけですが、日本は、本当に素晴らしい鉄道システムをお持ちだと思います。皆様、誇りに思って下さって十分なシステムをお持ちです。今度は、私どもイラクの大使、イラクの技術者が、イラクに戻りまして、イラクの国民に伝えることが、今、課せられた責務だと思っています。もちろん鉄道にかかわる人たちに、今回日本で見聞したことを伝え、国の復興に役立てていくべく、伝えることを責務だと感じています。
さて、どうしてもイラクの政情・政治について、お話ししなければなりません。イラク大使という役柄、このことは、避けては通れません。
先週木曜日、小泉首相は、日本の自衛隊のイラクのサマワからの撤退の命を出しました。すでに撤退作業は進んでおりまして、クウェートへと移動をしているところです。サマワでの任務を終え、撤退の途についたわけですが、これまで、素晴らしい人道支援をしていただいております。もちろん、自衛隊の派遣については賛否両論あるとは思いますが、少なくとも自衛隊のみなさまが、サマワの地で行った様々な支援活動・サービスについては、日本の国民の皆様は、誇りとすべきものだと感じております。
自衛隊撤退・撤収の決断は、イラクの首相が、多国籍軍より治安権限の委譲を認めた翌日になされたものでした。
治安権限委譲というイラク首相による決断は、いくつかの条件を満たす必要がありました。サマワがありますムサンナ県内においての条件ですが、まず一つは、政治的なプロセスが整っているかどうかということ。二つ目は、治安が確保できるかということ。そして三つ目が、この地域における警察・治安の能力が、それを維持するのに十分であるか。という三点です。これが確保されたという認識のもとに、治安権限の委譲の命令が出たわけです。
先月、何十年もの月日を費やしまして、初めて、憲法に適った形での選挙が行われ、政府が樹立しました。
そしてこの選挙に先立つ六ヵ月前、国民選挙が実施されました。それは、まだテロの危険が渦巻く中での実施でしたので、多くの人が投票に行くことに対し不安を感じた状況の中でもありました。しかし、大多数の選挙民が一票を投じ、初めて国民議会・議員の選挙が成されたというのが始まりです。
その他にも、先ほど申しましたように、未だテロの脅威が冷めやらない状況ですが、イラク人の中には、勇気を持って、警察官になる人、軍隊に入る人などが出てきています。
今回の自衛隊の撤収を契機に、これから日本とイラクの関係は、新しい局面へ入っていきます。より強い協力関係を持って、イラクの復興へと日本の皆様が、関与してくださる、そのような局面に入っていくと考えています。
今後のイラクの復興の中で、ぜひ大きな支援の手をいただきたいとイラク国民たちは大きな期待を抱いています。
昨年スタンフォード研究所が、調査を行いました。イラク人に対して、いったいどの国からの支援を欲しいかという問いをしましたが、その第一として挙げられた国が日本でありました。
イラク国民は日本の方々にイラクに来て、支援をしていただきたいという気持ちを強く持っているわけです。もちろん、復興には、非常に戦略的な計画を立てて取り組む必要があります。しかし、どういう計画にしろ、その中で、鍵を握る役割を果たして下さるのが、日本だということに変わりがありません。
もちろん、イラク復興のためには、国際社会に働きかけていくことも必要です。そして、イラク人自身ができることもたくさんありますし、その力を発揮していきたいと思っています。その歩を進めていく上で、やはり、日本からの支援が必要なわけです。
具体的に申しますと、日本からは、皆様の経験を教えていただきたいということです。六十年前、日本は、戦争によって 一度破壊されました。その中から、立ち上がる上で、皆様が、成功されたこと、また中には、失敗もあったと思いますけれども、そのようなものを教えていただきたいと思うわけです。
日本は、世界に名だたる技術国です。皆様から、技術を学びたいということが、一つあります。そして、さらに大切なことは、その技術を人々のために使うということです。そのようなものを、包含したシステムを教えていただき、新しいシステムをイラクの中で作っていきたいと思っています。人々の幸福に資するようなシステムを作っていきたいと思っています。
三つ目に皆様に教えていただきたいこと、それは、環境という観点からの認識と取り組みです。イラクは30年間の独裁政権のもと、内戦あり、また、隣国との対立がありました。そんな中で、環境破壊が非常に進んでいます。多くの人が、環境破壊による病気にさいなまれ、また公害にも悩まされています。放射性の物質による害も出てきています。
ですから、今後、国が復興していく中で、とりわけ、輸送システムの復興を成す中で、この環境という観点からのいろいろな技術や経験を、教えていただきたいと思っています。
最後になりましたが、今回、私を招いてくださったこと、また二人のイラク人技術者をお招きいただいたことに対し、心よりお礼を申し上げます。二人は、自分の経験を持ってこちらに参り、イラクの鉄道の現状をお話する機会を得ております。そのことについても、素晴らしい機会を得たと思っております。
本当に皆様の寛大なお心に感謝するとともに、今後イラク鉄道の復興に対し、一つの大きな決断をなさってくださったことに対し、重ねてお礼を申し上げて、私の挨拶といたします。
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