5月31日(火)、JR西日本の安全体質の確立に向けた「安全性向上計画」が策定され、三組合(JR西労組、国労西日本本部、建交労西日本鉄道本部)が参加した第7回臨時労使安全会議において、提示されました。
労使安全会議に先立ち労使代表者会議が行われ、会社を代表し坂田専務が「安全性向上計画はいわばスタートラインに過ぎない。今後は労使で具体的に実行、あるいは足らないところをさらに議論を深め補い、安全性を再構築したい」と述べました。これに対し、森正暁JR西労組中央執行委員長は、「私たち三組合も安全対策、ハード対策、教育、ダイヤ等に論文であってはならないと言う思いで議論してきた。絵に描いた餅にならないよう今後も議論を継続し、安全を確立したい」との決意を述べました。
また、臨時労使安全会議終了後には、「『安全性向上計画』策定にあたっての三組合共同コメント」を発表し、森正暁中央執行委員長は、「『安全性向上計画』はJR西日本の公約、マニフェストであり、私たち労働組合には、このマニフェストを実行、検証する責務がある。二度と再びこのような重大事故を起こさないためにも労働組合自らも安全体質を確立しなければならない」との誓い、決意を述べました。
JR西労組は、この「安全性向上計画」を受け、引き続き労使交渉を行い、教育・訓練、保安設備整備、企業風土の構築等について議論を深め、施策を推進していきます。
【安全性向上計画目次】
(JR西日本ホームページ「安全性向上計画」
http://www.westjr.co.jp/news/newslist/article/pdf/050531a_01.pdf
J.安全に係る現状の総括(反省すべき点・課題)
K.安全性向上に向けての基本理念
L.行動計画等について
1. 風土・価値観の変革に向けた取り組み
2. 「事故の芽」等の報告に対する対応方の是正
3. 教育・指導のあり方の見直し
(1)管理者教育の充実
(2)人材育成・教育制度の見直し
4. 情報伝達・共有のあり方の見直し
5. 事故再発防止に向けた取り組み
6. 運行面・設備面での安全対策にについて
(1)緊急安全対策
@ATS−SW(速度照査機能付)の整備
A列車ダイヤの見直し
BATS−P型の整備促進
C最高速度超過防止対策
(2)設備の信頼性向上の早期実施
@設備及び車両の老朽取替の促進
A車両運用の弾力性向上
B地震・防災対策
C踏切保安度向上対策
7. 新たな経営理念の策定と全社員への浸透
8. 安全を支える投資計画
《安全関連投資の概要》 単位:億円
|
安全向上計画 |
現行計画 |
増減 |
安全関連投資 |
2,900 |
2,300 |
+600 |
保安防災 |
850 |
430 |
+420 |
老朽設備 |
810 |
710 |
+100 |
車両関係 |
1,240 |
1,160 |
+80 |
設備投資総額 |
5,000 |
4,400 |
+600 |
○保安防災対策のうちの主な項目
|
安全性向上計画 |
現行計画 |
増減 |
ATS整備 |
181 |
21 |
+160 |
ATS−P |
78 |
19 |
+59 |
ATS−SW |
103 |
2 |
+101 |
耐震対策(在来線) |
82 |
18 |
+64 |
踏切保安度向上等 |
124 |
96 |
+28 |
「安全性向上計画」策定にあたっての三組合共同コメント
107名もの尊い命を奪い、540名を超える多くの重軽傷者を出したJR福知山線列車重大事故の発生から1ヶ月余が過ぎました。
あらためて、お亡くなりになった方々のご冥福をお祈りし、お怪我をされた方々に対し、心よりお見舞い申し上げ、JR西日本に働く者としてお詫び申し上げます。
本日、JR西日本の安全体質の確立に向けた「安全性向上計画」が策定され、労働組合に提示されました。
「安全性向上計画」策定にあたっては、本日までに7回の臨時労使安全会議を開催し、特に企業の安全風土を形成する重要な課題である教育に関しては専門委員会を設置し、安全体質確立に向けた社会的な要請に応えるため、労使協議を重ねてきました。
当初より私たち労働組合は国土交通省に提出するためだけの作文は認められないとの立場を明らかにし、現場実態を踏まえて労使協議を行ってきたところです。
本日提示された「安全性向上計画」は、これまでの協議の中で私たちが強く主張した内容、すなわちハード対策についてはATS-P型の整備を平成22年度までにアーバンネットワークのほぼ全域にわたって進めるなど、平成20年度までの当面4年間で当初予定より600億円増額した2900億円の安全関連投資を行うこと、社員教育については管理職の意識改革と約25億円の教育設備の拡充、人員の増強も含めて実効ある教育体制の充実を図ること、列車ダイヤについては、停車時分、余裕時分などの見直しにより、ダイヤの安定化を図ることなどが盛り込まれた計画となりました。こうした内容を踏まえ、最終的に本日、会社より提示された「安全性向上計画」を私たちは了解しました。
「安全性向上計画」は、今回の事故でお亡くなりになった方々、ご遺族、お身体や心に傷を負われた方々、日頃ご利用いただいているお客様、そして社会に対するJR西日本の公約、すなわち「マニフェスト」であり、私たち労働組合はJR西日本内部にあって、この公約を実行、検証する責務を担う立場にあると重く受け止めています。
また、「再教育」問題などについては、引き続き協議を行い、私たち働く者が納得できるものを作り上げていきたいと考えています。
経営責任は企業が担うものと考えますが、安全に関しては、労使が責任を共有するものであるとの自覚を持ち、「安全は輸送業務の最大の使命」との信念のもと、私たち労働組合自らも安全体質を確立し、二度と再びこのような重大事故を起こさないことをあらためて誓い、決意するものです。
西日本旅客鉄道労働組合 中央執行委員長 森 正 暁
国鉄労働組合西日本本部 執行委員長 上 村 隆 志
建交労 西日本鉄道本部 執行委員長 山 本 恵 三
|