JR西労組「第17回定期中央本部大会」で確認した本年度の運動方針の柱
1.「安全性向上計画」の実行を検証し、現場実態に基づき、積極的な問題提起で、安全・安定輸送の確立
5月31日、JR西日本が国土交通省に提出した「安全性向上計画」は西労を除く、JR西日本労使が、JR宝塚線事故の被害者、御遺族、そして社会に対してのマニフェストとして策定したものであり、計画を策定した精神に則り実行していくことが、私たちに課せられた使命です。そして、私たちJR西労組の理念である「対立と協力」は、安全問題こそ徹底して会社と対峙すべきであることをあらためて心に刻み、取り組みを進めて行かなければなりません。私たち働く者の強みは現場を知っていることです。安全確保について本社・支社での机上の議論ではなく、現場の実態を示すことでその改善を進めていかなければなりません。そして、私たちが進める企画提案型運動に基づき、「どうすればより安全を確保できるのか」の視点を持って、会社に対して健全に問題提起、改善要求を行い安全で、安定した輸送の提供を確立していきます。
また、身近な日常的な安全課題に対する労使での課題認識の共有化と安全対策強化の観点から、「安全衛生委員会」をより活用した取り組みも引き続き展開していきます。
2.変革・改革の時期、次代を担う人材の育成とJR西労組運動の責任ある継承・発展の取り組み
大量退職とともにJR採用者の比率が年々拡大し、青年女性組合員の比率も約25%を超えるに至っています。また、契約社員の導入拡大や、鉄道職採用などの導入により、組合員構成も大きく変化する中、「継承」をキーワードとし、教育活動や職場活動の充実もより一層求められてきています。JRになってから採用された組合員も、名実ともにJR西労組運動の中核メンバーとして、運動の牽引役を担ってきている状況となっています。
JR西労組は、これまでイデオロギーを排し、「対立と協力」を基軸に、真に組合員の負託に応え、責任ある運動の展開を積極的に行うことで、健全で安定した労使関係を構築してきました。今後のJR西労組運動の発展を託すリーダーの育成を全組合員で取り組むとともに、これまで私たちが経験した国鉄時代の苦い思いも踏まえ、国鉄改革の原点を見失うことなく、「対立と協力」に基づく、健全なJR西労組運動を次代に責任を持って継承する取り組みを一層、進めていきます。
3.組織率90%に近づいた組織率を基盤に『ステップ21』の具現化など、「力と政策」に基づいた
企画提案運動の実践、展開
私たちは、急速に変化する今日的な私たちを取り巻く環境を分析し、私たちの進むべき道を新しい中期運動指針「ステップ21」として策定しました。中期政策ビジョンとして、その内容を全組合員で共有化し、具現化する取り組みを図ってきています。本来、本定期中央本部大会で取り組みと成果の検証を踏まえ、中間総括を行うこととしていましたが、JR宝塚線事故を踏まえ、あらためて安全を基軸に据えた視点でこれまでの取り組みを検証し、来年の第18回定期中央本部大会において、中間報告をまとめていくこととします。
特に、地方ローカル線の活性化、大量退職と厳しい要員展望、非正規社員の増加、グループ企業への外注化など環境の大きな変化を的確にとらえながら、社会的な問題提起も含め、重要課題に対して積極的に働く者の側からの責任ある企画提案運動を展開し、課題の解決、前進に取り組むこととします。
4.一企業一労働組合に向けたさらなる組織の充実・強化・拡大
国労の「1047名雇用問題」について、今年9月に鉄建公団訴訟の判決が出され、新たな局面を迎えています。昨年12月の最高裁判決により、上告棄却され、司法における問題解決の道を閉ざされ、まさに八方塞がりの状況にありましたが、今回、鉄建公団訴訟の東京地裁判決において、慰謝料の支払いを命ずる判決が出されたことで、国労内部での組織的動向に注視が必要と考えています。また、JR総連、東労組は相変わらず、組合員不在の本部派・嶋田派の対立が引き続き、JR西日本においても、西労は事故発生直後から安全問題と言いながら、臨時労使安全会議にも出席せず、事故に乗じて、マスコミを利用した西労の会社批判と宣伝活動は何ら建設的なものではなく、JR西日本に働く私たちに不快感と今更ながらの不信感を増幅させ、今日に至っています。JR労働運動の民主化のためにも、組織動揺が生じている他労組組合員に対し、何が私たちの生活を守り、社会的・経済的地位の向上に繋がる運動なのかを訴え、組織拡大行動を展開し、一企業一組合に向けた取り組みを強化していかなければなりません。
また、「分会活動の手引き」などを有効に活用し、「対立と協力」を基軸とする運動理念を次代に継承し、大きく変化する職場の組合員構成を踏まえた組合活動の充実を図る必要があります。とりわけ青年女性組合員に対して世話役活動の重要さと魅力ある労働組合活動の継承にむけ、引き続き、各級機関役員との連携を強化し、組合員と家族に信頼される、魅力あるJR西労組の組織、運動づくりに取り組んでいきます。
5.危機に直面する地方ローカル線と駅を活性化し、地域振興を図る交通政策の実現にむけた積極的な取り組み
私たちはJR西日本の路線の半分以上を占めるローカル線問題を中心に、地域活性化運動を積極的に展開してきています。しかしながら、鉄道運輸収入は8期ぶりに下げ止まったものの、とりわけ地方路線における減収は極めて厳しい状況にあると言えます。こうした状況から、地方ローカル線に向けられる目が今まで以上に厳しくなることは必至です。高齢化社会において人と環境にやさしい公共交通機関である鉄道を地方の財産として活かし、JR連合が策定した「自動車に過度に依存しない、持続可能な交通体系作り」を目指した「21世紀鉄道ビジョン」の具現化に向け、自治体、社会に対する意見提言や会社との協議など危機意識を持った運動の展開を図っていきます。